日本一現実的なディズニー夜話第9回:たった一枚の絵で読み解く、上海版「カリブの海賊」の最新技術
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日本一現実的なディズニー夜話
第9回:たった一枚の絵で読み解く、上海版「カリブの海賊」の最新技術

2015.06.18

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■ディズニーが大きく動く2015年――
「ある1つ」をのぞいて

2015年はディズニーにとって大変重要な年です。7月4日にはアイアンマンやキャプテン・アメリカなど、マーベルスーパーヒーローが一堂に集結する映画「アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン」が公開される予定で、一足先に公開されるアメリカでは多くの記録を塗り替えるだろう、と言われています。さらに12月18日には、皆さんも待望のスター・ウォーズ新三部作の第一作目「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」が公開されます。4月16日よりカリフォルニア州アナハイムで開催されたスター・ウォーズのイベントにて特報が公開され、ファンはその内容に大盛り上がりしました。個人的には、最新作に登場する玉乗りドロイド「BB-8」に驚きました。この動き!
宮田 健

■ 本来2015年に盛り上がるはずだった「上海ディズニーランド」

そして、本来2015年末に大きなニュースになるはずだったものがあります。それは「上海ディズニーランドのオープン」。アメリカ、日本、フランス、香港に続くディズニーのテーマパークとして建設中の上海ディズニーランドは、当初予定の2015年末から「2016年春」へとオープンの延期が発表されました。その延期の発表のタイミングで、いくつか新しい情報が出てきています。それが者は意ディズニーランド版「カリブの海賊」です。

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図:上海ディズニーランド版「カリブの海賊」イメージ(プレスリリースより)
https://www.shanghaidisneyresort.com.cn/en/press-room/press-release-shanghai-disney-resort-tops-out-new-disneyland-hotel/

上海ディズニーランド版「カリブの海賊」は、正式には「Pirates of the Caribbean: Battle for the Sunken Treasure」と名付けられています。東京ディズニーランドにも開園時から存在するカリブの海賊は、2003年にジョニー・デップ主演の映画「パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち」が制作され大ヒットに。その後2006年には映画に登場するキャプテン・ジャック・スパロウがアトラクションにも反映されました。前回紹介したアトラクションと同様、カリブの海賊も時代とともに変化してきたアトラクションの一つと言えるでしょう。

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図:上海ディズニーランド版「カリブの海賊」建設中の様子(プレスリリースより)
https://www.shanghaidisneyresort.com.cn/en/press-room/press-release-shanghai-disney-resort-tops-out-new-disneyland-hotel/

そして今回の上海ディズニーランド版カリブの海賊は、さらにその映画のストーリーに合わせ大きく進化したものと言えます。ディズニー社が発表した上記の建設中の様子を見ると、イメージとして作られたアートが忠実に再現されているのが分かります。おそらく、写真左の海賊船は、映画「パイレーツ・オブ・カリビアン/デッドマンズ・チェスト」に登場する幽霊船、「フライング・ダッチマン」号ではないかと推察されます。2016年春、世界でも上海にしかない「カリブの海賊」に大変期待しています。

■ 上海版は単なる「ボートライド」ではない?!

実はディズニーがこのような「建設中」の様子を公開するのはかなりめずらしいことです。もともとのオープン予定を延期するということで、何らかの動きを公開せざるを得なかった――と私は考えています。そして、この写真が大変な「ヒント」になっていることを見逃すわけにはいきませんでした。
上記の写真をみると、ちょっとふしぎな点があります。それは「水路」。船の間にたしかに水路らしきものが見えますが、その幅がすごく狭いのです。この水路の幅ですと、船のサイズは横にふたりくらいしか座れないでしょう。さすがにそれはおかしいと思います。そこで、世界中のディズニーマニアが情報をあさった結果、ちょっと面白い情報のつながり方が見られました。まず、中国にて放映された、この建設の様子を報じたCCTVのニュース動画を見てみましょう。

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図:CCTVのニュース動画

少々荒い映像なのですが、上記公式画像とは逆の場所、船の奥からの映像が見て取れます。注目すべきは、水路の幅です。
この構造を見て、確信しました。上海版のカリブの海賊は、最新の技術が使われている――それも、ディズニーが持つ「ある特許」を使ったものが!

■ ディズニーが持つ特許「Amusement park ride with underwater-controlled boats」とは?

その特許とは、特許番号US 8091483 B1、2012年1月10日に公開された「Amusement park ride with underwater-controlled boats」というものです。東京ディズニーランドにあるカリブの海賊やイッツ・ア・スモールワールドのような、ボートの左右にあるガイドレールでコントロールするのではなく、ボートの船首と船尾の「下部」にあるガイドを用いてライドをコントロールする、という内容です。
そしてこの特許の重要な部分は、船首と船尾のコントロールを別々に動かすことで、ボートをいわば「ドリフト」できるというもの。この方法を使うと、ボートを船首方向ではなく、横にも動かせるという仕組みです。特許文書から引用した、この図を見ていただくと分かりやすいでしょう。

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図:特許 US8091483 ? Amusement park ride with underwater-controlled boats 図4から引用

上記のように、この特許技術を使うと、あるシーンにおいては中央の「Show Scene」に注目できるよう、船首を中央に向けたまま、右舷方向に移動するということが可能になります。このとき、下部のレーンは船首方向に向かう部分は狭く、Show Sceneでは広がっているのがわかるかと思います。 ここで、再度CCTVの画像をチェックしてみましょう。

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図:CCTVの画像

こちらを見ると、左からゲストの乗る船が、海賊船の間を通る水路が見えるかと思います。ところが、そのカーブにおいて、水路の「幅」が広くなっているのがお分かりでしょうか。直線では水路の幅が狭く、カーブでは広くなる……そのような構造を取っているのがこの動画から分かります。
このことから、上海版カリブの海賊は、2012年にディズニーが公開した特許「Amusement park ride with underwater-controlled boats」を活用した、最初のアトラクションなのではないか――と、私は考えています。その点を考えると、あえて公式写真がカーブ部分を「隠して」公開したのでは、とまで。
この予想が当たるのか当たらないのか、それは実際のオープンを迎えるまでは分かりません。上海ディズニーランドは、これまでディズニーが培ってきた最新の技術が惜しみなく投入されるパークであると、私は確信しています。
あっと驚くような魔法(もちろん、エンジニア的な言葉で言えば“技術”)を目の前で見せてくれるまで、あと1年ほど。それまで楽しみに待っていたいと思います。

原稿:宮田健(みやた たけし)
主にネットワークやセキュリティを中心とした、エンタープライズITに関する情報を追うフリーのライター。
IT以外にも旅行やエンターテイメントなども広くカバーし、趣味と仕事の境界をどこまであいまいにできるか挑戦中。
http://dpost.jp/about/

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