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「勉強会に行ってみた!」第11回「Google Cardboard勉強会」
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「勉強会に行ってみた!」
第11回「Google Cardboard勉強会」

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最近各地でよく開かれているIT勉強会。あなたは参加したことはありますか?
一口に勉強会といっても、企業によるセミナー形式のものから有志による輪講形式のものなど様々ありますし、「行く価値があるのかな?」とか、逆に「自分だとレベルが追いつかないんじゃないか?」みたいに考えてしまって、二の足を踏むことも多いんじゃないかと思います。また、勉強会のテーマについては事前に分かっても、具体的にどんな雰囲気までは分からないことがほとんどです。
そこで実際に勉強会にお邪魔して、こんな雰囲気でしたよ!と紹介するのがこの記事の目的です。「こんな感じなら行ってみようかな」みたいに思ってもらえたらうれしいです。(三土たつお

今回は、東京・原宿で開かれたGoogle Cardboardの勉強会にお邪魔しました。正式なタイトルはちょっと長くて「”ギーク女優”池澤あやかさんがゲスト参加! Google CardboardでVRプログラミング体験」です。会場は「株式会社ホールハート」のオフィスで、主催者はそちらに所属する瀧澤さん。勉強会の開始は19時からで、お邪魔すると会場はとてもオシャレな感じでした。

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ほらね、奇麗でしょう。最近の勉強会ってこんな感じのおしゃれな場所でやるのが増えたなあと思います。場所が原宿っていうのもあるかもしれませんけどね。

■ 第一部: Google Cardboard の説明と組み立て

さて今回の勉強会のタイトルになっている Google Cardboard ですが、こんなものです。

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かわいいでしょう。素材は段ボールです。自分で組み立てる簡単な構造ですが、これでちゃんとVRできるんです。2014年のGoogle I/O で発表されたときに話題をさらいました。

勉強会の第一部は、このGoogle Cardboard の説明と、実際に組み立てて使ってみるところまで。講師はホールハートの森川さんです。最初は、VRとは何か?という話題から入りました。Facebook のVRのデモなどを流しながら、VRについての説明をします。

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ホールハートCTOの森川さん

そしていよいよ Google Cardboard の説明です。使い方としては、本体の中にスマートフォンを設置し、二枚のレンズから双眼鏡のように覗きます。その際スマートフォンからは専用の映像をアプリで映し出すことでVRできる、という仕組みです。

なので普通にやるとAndroidアプリ作成の知識が必要になります。グラフィックについてはOpenGL ES を使うそうです。

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これは Eclipse でCardboard 用アプリを開発している画面です。CardboardActivity とかの文字が見えますね。実際にアプリを動かしたところはこんな感じ。

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右目と左目用の画面をそれぞれ描画してるのが分かりますね。

一通り説明したところで、いよいよ組み立てです。実物のキットが配られて、参加者が各自それを組み立てます。やり方を解説するのはゲスト講師の池澤さん。

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池澤さんは女優としても活躍しているんですが、それだけではなく「Rubyの女神」とも呼ばれたりとITエンジニアとしても活躍しています。実際、組み立てに入る前に森川さんに対して「CardboardのSDKって(比較的簡単な)Unity版もありますよね。どうして Cardboard SDK for Androidを選んだんですか?」と突っ込みを入れていたのが印象的でした。

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みなさんスジがいいのか、10分もすると順調に組み上がる人が多いようでした。あらかじめダウンロードした専用アプリをスマートフォンで実行させてCardboard にセットし、横や上を向いて動作を確かめます。

作ったCardboardは参加者にプレゼントされました。というところで Cardboard についてはここまで。次は、講師4人による座談会となりました。

■ まずは講師の自己紹介

座談会の前に、講師自身による簡単な自己紹介がありました。

まずは池澤さん。

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「『ひとりチームラボ』みたいなことをしてます」と言いながら、実際に作った作品のデモを見せてくれました。

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例えばこれは「syncFish」。

水槽の中にメダカが泳いでいます。水槽の左側に手を置くと時計回りにメダカが泳ぎ、右側に手を置くと反時計回りに泳ぐ、という驚きの作品です。仕掛けとしては、周囲の景色によってメダカの泳ぐ方向が変わるという研究を参考にして、水槽の中に映像を流し、手の位置によってそれを変えているんだそうです。ただし、展示を見る人にはその映像が見えないように、メダカだけに見えるように工夫することで不思議な感じを演出したとのこと。

発想も実装もとても冴えていて、ふつうに美術館に作品として置かれててもおかしくない、というより美術館で見てみたいなと思わせるものでした。

次は株式会社ココラブルの梅林さん。

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以前の職場が森川さんと同じIMJで、弓削さんの前任でシステム開発本部の本部長を務めていました。現在は、ココラブルというネットマーケティング企業の開発室長という立場で、自社のネットサービスを企画・開発・運用する業務に携わっていらっしゃいます。「インターネット業界って面白そう」と学生の方に思って欲しいとのことでした。

次は株式会社IMJの弓削さん。

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システム開発本部の本部長というすごい偉い方ですが、気さくに現在の業界や自分の経歴について語っていました。最近、IMJでは Pepper というソフトバンクのロボットを使ったコンテストで「ベストユーザーインターフェース賞」を受賞しました、とのこと。すると横にいた池澤さんから「それ、私が決めました!」と声が。

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「私が決めました!」

なんと池澤さんはその大会の審査員の一人だったんですね。世間は狭いというか、弓削さんも池澤さんも外の世界で活躍しているからそういうことになるんでしょうね。いい話です。

最後は森川さん。

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森川さんはすごい経歴の持ち主です。IMJモバイルなどいろんな会社で取締役やCTOを歴任したり、自分で会社を設立したりしています。かつてプロデュースした「チャリ走」というゲームアプリのシリーズは1700万ダウンロードを達成したとのことで、参加した学生も多くの人が知っていました。自分が作ったものをみんなが知ってる、使ったことがあるっていうのはエンジニアの憧れです。羨ましいなと思いました。

■ 座談会:「エンジニアの現状と未来」

そして座談会が始まりました。話題は、IT業界の現状と将来をどう考えるかです。

まずは梅林さんが話し始めました。

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「まず、増加し続けるインターネットユーザ数。世界には現在、約29億人のインターネットユーザーがいる。これは全世界の人口の約4割で、10年後には55億になると言われている。また、IoT(Internet of Things:モノのインターネット)にも注目している。現在100億を超えるデバイスがインターネットに接続されており、5年後には300億、10年後には500億を超える見込み。日本だけではなくて世界に目を向ければ、これらの膨大な数のユーザー、デバイスにつながるネットサービスをつくりあげることもできる。間違いなく、我々の生活そのもの、世界がリモデルされることが予想される」。

確かに世界を意識することで可能性が全然変わりそうです。

池澤さんは「DIYのIT化が来ると思う。いままでのDIYは木で棚をつくるような世界だったけど、これからは自分だけのオリジナルの製品を作ることができる。3Dプリンターなど、ファブリケーション技術も進化している。」と語っていました。「例えば新しくでたEdison は Arduino と違ってすぐにインターネットにつなげられたりと、ツールも便利になっている」と続けていて、確実にギークだと思いました。

次の話題は「エンジニアで良かったこと、悪かったこと」。

弓削さんは、「最初は業務システムを担当したが、性質として顧客ユーザーだけが使うもの。広く使ってもらえるコンシューマーサービスに移ったときは嬉しかった」と語り、さらに「今のみんなが羨ましい。世界中にアウトプットできる環境があるから。昔は大企業にいないと広くみんなに使ってもらうのは無理だった。一方で、大量の競争相手の中でいかに自分を知ってもらうかという問題がある」と続けました。

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池澤さんは「エンジニアとしてつらいのは、締め切りが重なると寝られないこと。計画を立てても、一つのバグにひっかかって前に進めないようなこともある」と語っていました。

■ 会場からの質問

続いては会場からの質問を受けつけるコーナーでした。こういうセッションの後に質問をするのって結構勇気がいると思うんですが、ちゃんと手が挙がってしかも本質的な質問が出ていたので感心しました。

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質問する参加者。池澤さんの大学の後輩だそうです。

質問の内容は「人工知能の進化により、簡単な作業をやるようなエンジニアは減って行く予想がある。どうすればいいか?」というものでした。

いま現在はまだ、人間の知的な仕事をコンピュータが取って代わる気はしませんが、近年の機械学習の進展やコンピュータ将棋の話題なんかを見てると、将来的にはたしかに一定レベルの仕事は奪われるのでは・・という不安があります。

弓削さんは「大問題。10年後はこれこれの仕事がなくなるというような予想もあるし、息子はどうなるか?と思っている。芸術など、必ずしも合理性だけでないクリエイティブな部分は人間の仕事として残るかもしれない」と語っていました。

池澤さんは「生き残り術はよく考える。2つの軸を持っていることが大切と思う。エンジニアだけどデザインも得意とか。知識どうしのコラボレーションについてはコンピュータでは補完できないのではないか」と語っていました。池澤さんに2軸と言われると説得力ありますね。

他にも続々と質問が上がり、しかも実のある内容ばかりで、学生のみなさんしっかりしてるなあと思いました。

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勉強会の後は相談会になりました

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ホールハートの瀧澤さん

最後に、主催会社ホールハートの瀧澤さんにお話を伺いました。ホールハートではITや広告業界系の人材紹介をしていて、その一環として学生向けに業界を知ってもらうための「新卒アドベンチャーズ」という企画をやっていて、今日の勉強会はその1つとのことでした。

□新卒アドベンチャーズ
https://shinsotsu2016.adventurez.jp/

勉強会というと以前は技術者どうしで知識や意見を交換するものが主流でしたが、いまでは形態も多様になってきているんだなということを実感しました。

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Google Cardboard は楽しそうで試してみたくなりました。これに限らず、勉強会でも話題の出たArduino や Edison といったものを使って、実際に手で触れて動作が目に見えるものを作ってみたいなあと思いました。

今回参加した勉強会:
“ギーク女優”池澤あやかさんがゲスト参加! Google CardboardでVRプログラミング体験
http://connpass.com/event/12269/

三土たつお。1976年生まれ。プログラマー、ライター。プログラマーとしてはふだんPHPを書いてます。
ライターとしてはニフティのデイリーポータルZとかで書いてます。
http://mitsuchi.net/

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