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日本一現実的なディズニー夜話第6回:夢のような世界も「最初の一歩」から
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日本一現実的なディズニー夜話
第6回:夢のような世界も「最初の一歩」から

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ディズニーは夢のような世界を作り出す……これを理系的にかみ砕くと、「ディズニーは技術で驚きを作り出す」となるでしょう。でも、その一歩目は地味なもの。今回は、ディズニーが最近発表した「Interactive Air-Powered Robot Arm」と呼ぶ、ロボットアームのデモを紹介しましょう。(宮田 健

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動画を見ると、ロボットアームが大変滑らかに動いていることが分かります。その後女の子が登場し、木琴を演奏すると…なんと、ロボットアームが全く同じように演奏するではありませんか。演奏も滑らかで、まるで人が乗り移っているかごとくです。

と、ここで種明かし。動画の最後でカメラが引いていくと……そこには、まったく同じロボットアームを手で操作する人の姿が。なんてことはない、人が動かしていたのですね。

とはいえ、これはかなりすごい技術です。詳細な解説動画を見ると分かるのですが、これは気体とポンプを使ったシリンダーのようなもので、片側の動作がほとんどタイムラグなしに反応するという点がポイントです。

■ 大したことない? いえいえ、これが未来に花咲く「基礎研究」なのです

一見大したことのないようなこの基礎技術は、将来大きな「エンターテイメント」に発展するはずだと、私は考えています。

人の動きを真似るロボットという意味では、ディズニーはすでに1964年ごろから基礎研究を続けています。例えば、1964年に撮影された、ウォルト・ディズニー本人も登場するこの映像では、体中にハーネスと呼ばれるセンサーを付けた人の動きを、そのままロボットに伝えるというシーンが登場します。人の動きを一度コンピューターに覚えさせ、その動きを「再生」するためです。

そして、今回の「Interactive Air-Powered Robot Arm」。低遅延でタイムラグなしに動くことで、より滑らかに、より簡単な仕組みで動きをリアルタイムにコピーできるようになりました。もしこれが、人の形ではないロボットに応用され、ディズニーランドのアトラクション内に登場したら・・・? 対面する観客の反応に合わせて、滑らかな動きをする「怪物」と対峙(たいじ)できるようになるかもしれません。

同様に基礎研究が花開いた事例を紹介しましょう。その名も「ウェディングケーキ・プロジェクションマッピング」です。

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2014年9月に発表されたばかりのこのど派手なウェディングケーキは、これまで特許文書としてひそかに研究が進んでいたもの。この特許では、ウェディングケーキにプロジェクターで映写を行い、ケーキをカットした部分だけ別の映像を加えるなど、むしろこれまで特許になってなかったの?と思うような、地味な内容でした。

この特許の出願日は2009年6月10日でしたから、実に5年の歳月を経て花開いたものです。動画を見れば一目瞭然、夢のような演出が可能なウェディングケーキができあがりました。ケーキカットの直前、これまでの思い出がケーキに映し出され、メッセージが浮かび上がる……。そんなステキな結婚式が見られるようになる日は近いでしょう。

ディズニーの技術を作り出す人たちを、エンジニアとイマジネーションという言葉を組み合わせ「イマジニア」と呼ぶことはこれまでの連載でも紹介しました。イマジニアの仕事も、最初は地味なお仕事なのかもしれません。

今回ご紹介したものは地味な技術ながら、応用範囲が大変広く、動画を見て思わず感心してしまいました。基礎研究はどの分野でも重要なものです。いまエンジニアの皆様が携わっているお仕事も、今後未来に花開くようなものになるはずです。皆様の仕事で「夢」のようなことが実現できることを祈りつつ…。

原稿:宮田健(みやた たけし)
主にネットワークやセキュリティを中心とした、エンタープライズITに関する情報を追うフリーのライター。
IT以外にも旅行やエンターテイメントなども広くカバーし、趣味と仕事の境界をどこまであいまいにできるか挑戦中。
http://dpost.jp/about/

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