ITエンジニアにおすすめしたいアナログゲーム (1) 「囚人のジレンマと髑髏と薔薇」
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ITエンジニアにおすすめしたいアナログゲーム (1)
「囚人のジレンマと髑髏と薔薇」

2014.08.21

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ITエンジニアにカレー好きが多いのと同様、ボードゲーム、カードゲームといったアナログゲームはITエンジニアと相性がいいのではないか?と個人的に思っている。グラスを片手に卓を囲うといった雰囲気の良さ、木の駒の感触といった魅力に加え、海外のゲームはシステムが洗練されているものが多くロジック的に考察したくなる、といった魅力もある。
当コーナーでは私自身ITエンジニアの端くれとして、「これは興味深い!」と思うゲームをエンジニア目線で紹介していきたいと思う。(T・斎藤

■ゲーム理論というのは昔からコンピュータの研究分野のひとつだ。
そういった話でよく耳にする有名な命題に、「囚人のジレンマ」というものがある。

囚人のジレンマとは (Wikipediaより引用)

ゲーム理論や経済学における重要概念の一つで、「互いに協調する方が裏切り合うよりもよい結果になることが分かっていても、皆が自身の利益を優先している状況下では、互いに裏切りあってしまう」というようなジレンマを指す。

例▼
共同で犯罪を行ったと思われる囚人A、Bを自白させるため、警官は2人に以下の条件を伝えた。

  • もし、お前らが2人とも黙秘したら、2人とも懲役2年だ。
  • だが、お前らのうち1人だけが自白したらそいつはその場で釈放してやろう。この場合自白しなかった方は懲役10年だ。
  • ただし、お前らが2人とも自白したら、2人とも懲役5年だ。

この時、2人の囚人は共犯者と協調して黙秘すべきか、それとも共犯者を裏切って自白すべきか、というのが問題である。なお彼ら2人は別室に隔離されておりコミュニケーションはとれない。

こういったお題を聞いただけでも探究心をくすぐられ、ソリューションを考え始めてしまうエンジニア諸氏もいるのではないだろうか。こういったものの 最適解をコンピュータを使って模索したり、あるいはあえて最適解のない心理戦のような命題をコンピュータに与え、その中でどういう振る舞いを見せるか観察。プログラムで指示された通りに動いているだけのコンピュータの中に「思考のようなもの」を見出だせるか探ったりするなどいとをかし、だ。

が、「囚人のジレンマ」は自身がプレイヤーとなって考えるお題としては若干単純過ぎる。結局、条件次第かなという気がするからだ。例えば協調を選んで裏切られた時の デメリットを懲役10年ではなく死刑にしたら誰もが裏切り路線になるだろう。一方、パートナーを変えてずっと続くもの、例えば商品の価格競争みたいなケースだったら協調路線が主流となるのではないか等。つまるところ条件をどう評価するかという話になってくる。

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「髑髏と薔薇/Skull and Roses」 3~6人用/プレイ時間 15~45分

そんなことを考えつつ、プレイしてみたいのがフランス発のブラフゲーム、「髑髏と薔薇」。
非常にシンプルなルールながらも熱い心理戦が楽しめるゲームだ。

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暴走族の各チームの中から最高指導者を決めるというテーマ。が、テーマは別になんでもいい。なんだったらプロジェクトのサブリーダー達の中から真のリーダーを決めるというテーマにすり替えてもいい。

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各自、4枚ずつ手札に持つ。うち3枚は裏の絵が薔薇になっており、1枚だけが髑髏。表はどれもチームの絵になっており見分けはつかない。ここから1枚選び、自分の前に伏せて出す。

全員が出したら、その中から何枚薔薇をめくることができるかを時計回りで宣言し合う。1番多い枚数を宣言した人がチャレンジ権を得、カードをめくる。宣言した枚数薔薇をめくることができれば成功。途中で一度でも髑髏をめくったら失敗。ペナルティとしてランダムに手札を1枚失う。これを繰り返し、2回成功したら勝ち。

カードをめくる時はまず自分の出したカードからめくらなければならない。つまり、自分が髑髏を出していたら絶対成功できない。では髑髏を出すことのメリットはというと、他人のチャレンジを失敗させること。つまり、髑髏を出したらチャレンジできない(してもいいが失敗する)が、出さなければ他人が成功するかもしれない。薔薇を出せばチャレンジに成功するかもしれないが、逆に他人の手助けになるかもしれない。…というジレンマが発生するわけだ。

チャレンジの宣言は親から順番に行うが、宣言せずにさらにもう1枚カードを重ねるという選択肢もある。こうすると最初の宣言権は隣に移るが、代わりに自分だけが知っている確実な情報を2枚持つことになる。これは枚数を競る際に確実に有利になる。

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この中から何枚薔薇をめくることができるか? ただし髑髏を仕込んでいる人がいるかもしれない。

ゲーム理論的に考えると、「薔薇を出さなければ上がれないのだから、薔薇を出すべきでは?」という気がしないでもない。が、実際にプレイすると、みな凄まじいまでに髑髏ばかり出す。

「たった2回成功すれば勝ちなんでしょ? カンタンじゃない?」

初めてやるプレイヤーは大体みなそう思うようで、続々とチャレンジしては髑髏を引く。このゲーム、そのシンプルなルールから10分くらいで終わるゲームかと思ってしまうが、ほとんどの場合30分はかかる、じっくり腰を据えて取り組むべき案件なのだ。もちろん速攻で終わる可能性もあるが、よほど運と相手に恵まれなければない。

それを知っている老獪なプレイヤーたちは序盤はひたすら髑髏を出し、見積もりの甘いプレイヤーが自滅していく様子を黒い笑みを浮かべて見守る。 「あれ…?みんな髑髏しか出してない?」

と気付いた頃には、手札が少なくなっている。失敗すると手札をランダムに1枚失うが、それが1枚しかない髑髏だったら?あるいは手札が髑髏1枚だけになったら?もう勝ち目はほぼないだろう。逆に何人かがそういう状態に陥ってからが勝負の掛けどころ。壮絶な心理戦へと展開する。

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チャレンジに失敗して捨てられたカードの山。オレンジのJokersと緑のCarnivorousは
既にゲームから脱落している。(手札が0になるとゲームから脱落する)

というわけで髑髏と薔薇。

シンプルなルールながらも読み合い・駆け引きがあり、とても面白い。場所も取らないのでバーなどで飲みながらやるにも向いている。また、「これをコンピュータ同士で対戦させるならどういったアルゴリズムが強いだろう?」

などと考えながらプレイするのもエンジニア的な楽しみかたかもしれない。「コンピュータとハッタリ」「度胸のあるコンピュータ」など興味深い含みがいろいろあるかと思う。

ただし海外ボードゲームはモノが出回っている時とそうでない時があり、時期によっては入手困難なことも。が、トランプなんかでも代用できるので気になったら是非お試しを。

原稿:T・斎藤
1971年生まれ。システムエンジニア/ライター。茨城県つくば市出身。2001年より長崎在住。
ここ数年海外のボードゲームにハマっている。学生時代は麻雀の研究に余念がなかった。
長崎ガイド http://www.nagasaki.web-saito.net

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