日本一現実的なディズニー夜話 第2回:作品の出来以上に注目すべき『アナと雪の女王』の功績
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日本一現実的なディズニー夜話
第2回:作品の出来以上に注目すべき『アナと雪の女王』の功績

2014.05.20

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映画『アナと雪の女王』が日本でも大ヒットを続けています。国内での興行収入は121億円を超え、いまだに満席が続く劇場もあるようです。2014年5月6日に発表された米ウォルト・ディズニー社の1-3月期決算も絶好調。
ディズニーウォッチャーとしては安心できる結果でした。

この映画の良しあしや考察は今回触れず、この映画がそれ以外にどんな功績を今後もたらすかを考えることにしましょう。実はこれが「ディズニー」を知る第1歩になるかもしれません。(宮田 健

■ 功績その1:「ミッキーマウス」、スクリーンに帰還!

この映画、冒頭に短編作品が上映されていることをご存じでしょうか。この作品は『ミッキーのミニー救出大作戦』(原題:Get a Horse!)で、驚くことに、この時代にもかかわらず、モノクロのオールドミッキーが登場するというもの。冒頭部分は動画として公開されています。

短編アニメーション「ミッキーのミニー救出大作戦」特別映像



このあとどうなるのか? なぜモノクロなのかというのは、実際にこの短編を見た方ならばおわかりですよね。ミッキーマウスのデビュー作品はモノクロ作品の『プレーン・クレイジー』(1928年)。その後世界初のトーキー作品として『蒸気船ウィリー』に登場しました。一般的にはこのトーキー作品の公開日、1928年11月18日がミッキーマウスの“誕生日”となっています。

しかし、1953年の『ミッキーの魚釣り』を最後に、ミッキーはスクリーンで出会えるキャラクターから、東京ディズニーランドなどで出会えるキャラクターという認識になっていきました。その後、1995年に1つ短編がリリースされましたが、今回の『ミッキーのミニー救出大作戦』で実に18年ぶりの再デビューとなりました。

『ミッキーのミニー救出大作戦』に注目すべき点はもうひとつあります。実はこのミッキーの声をあてているのは、ウォルト・ディズニー本人なのです。もともと初期のミッキー短編はウォルト本人の声が使われており、今回の作品では過去の短編から音声をひとつひとつ取りだし、当てはめるという作業が行われました。劇中「Red!」というひと言がありますが、実はこの単語だけが過去の作品では見つからず、細かい音節をつなげて作ったそうです。

ディズニー社を今の地位まで押し上げたのは、このミッキーマウスがいたからこそ。ミッキーマウスの帰還に、映画本編が始まる前に私は涙してしまいました(苦笑)。

■ 功績その2:ウォルト・ディズニー社にとって映画のヒットは始まりに過ぎない

実は『アナと雪の女王』のヒットは、これからが本番です。

ウォルト・ディズニー社は何の会社か、と聞かれて即答できる人はそんなに多くないのではないかと思います。日本ではやはり東京ディズニーリゾートのイメージが強いでしょう。しかし、本国のウォルト・ディズニー社にとっては、テーマパークはあくまで1つの部門なのです。

ウォルト・ディズニー社には、大きく下記のような部門が存在します。

・映画部門:アニメーションだけでなく、実写映画も製作する。現在ではピクサー、マーベル、ルーカスフィルム、ジム・ヘンソンスタジオもディズニーの傘下として活動しています。

・メディアネットワーク部門:大手テレビネットワークであるABCやスポーツ専門チャンネルESPN、ケーブルテレビ部門のディズニー・チャンネルなどを運営する部門。

・パーク&リゾート部門:カリフォルニア、フロリダ、東京、パリ、香港、そして上海に存在するテーマパークを管理する部門。

・コンシューマー・プロダクト部門:ディズニーに関連するグッズなどを製作、販売する部門

・インタラクティブ部門:iPhone/Androidをはじめ、ゲーム製作やインターネットサービスを運営する部門

実はこのディズニーのビジネスモデルの起点は「映画」にあります。映画がヒットすることで、その映画に登場するキャラクターグッズが売れるようになります。『アナと雪の女王』においても、主人公エルサのドレスが飛ぶように売れ、公開から5カ月が経とうとしているアメリカにおいても品薄で販売数制限を行うほどのフィーバーぶり。映画のヒットはまず「コンシューマー・プロダクト部門」を潤します。

次にやってくるのは「テーマパーク」です。フロリダ、ウォルト・ディズニー・ワールドでは既にパレードに主人公の姉妹、アナとエルサが登場しています。さらに、アナとエルサはスクリーンを飛び出し、テーマパーク内でグリーティングを行っていますが、彼女たちに会うまでになんと3時間近く行列しないといけないほどの大人気。今後、もしかしたら東京ディズニーランドでもアナ、エルサに出会えるかもしれませんね。


そして最後は「メディアネットワーク部門」です。映画がヒットしていれば、その関連作品を放映したり、作品そのものを放映すれば視聴率も上がります。さらにゲームを作れば「インタラクティブ部門」も稼ぐことができますね。すでに『アナと雪の女王』については「アナと雪の女王 Free Fall」が大ヒットしています。

いま見えているのは、単なる映画単体のヒットでしかありません。今後、3?5年単位でこのヒットが大きな収益を生むことになります。そういう意味で、今回のヒットは大変注目しています。

■ 功績その3:日本でも「ディズニーのファン」が育つかもしれない

3つ目は個人的な希望です。今回の大ヒットによるメディアの盛り上がり方は、1991年に公開された「美女と野獣」のそれに非常に近いものを感じます。美女と野獣以前は、ディズニー映画は子どもが見るものという認識でした。こぞって雑誌がディズニー映画を取りあげ、大人こそ見るべきだ、と変えたのがこの作品です。

美女と野獣 (吹き替え) - 予告編



私の周りには、『美女と野獣』でディズニーに興味を持ちはじめた、という人が多いのです。そんな私もこの作品の音楽に興味を持ち、同じスタッフが作り出した関連作品を知り、ウォルト・ディズニー本人に行き着きました。日本においては東京ディズニーリゾートの必勝法や裏話が好きな人も多いのですが、もしかしたら『アナと雪の女王』からもっと深みにはまっていく人がいっぱい出てくるのかもしれません。

その人たちの登場は、10年単位で待つ必要があると思います。10年後、さらに深いディズニー論議ができるといいなあと思いました。楽しみだ!

原稿:宮田健(みやた たけし)
主にネットワークやセキュリティを中心とした、エンタープライズITに関する情報を追うフリーのライター。
IT以外にも旅行やエンターテイメントなども広くカバーし、趣味と仕事の境界をどこまであいまいにできるか挑戦中。
http://dpost.jp/about/

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