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社長力―経営トップの仕事論

経営トップの仕事論

社長力 - 経営トップの仕事論

2015年03月25日掲載

一生懸命やることが大事。だから、一生懸命になれる仕事を見つけることが重要になる

椎名 茂 氏

プライスウォーターハウスクーパース株式会社

プライスウォーターハウスクーパース株式会社
代表取締役社長

椎名 茂 氏

PROFILE

日本電気株式会社 中央研究所入社。コンサルティング会社を経て、2009年にプライスウォーターハウスクーパース入社。2012年より現職。コンサルタントとしての豊富な経験をベースに、企業のグローバルSCMの構築、新興国への進出支援、グローバルIT戦略立案などのコンサルティングを中心に活動。慶応義塾大学理工学部卒業。

世界157カ国19万5000人以上のスタッフを有するPwCのネットワークを活かし、約1500人のプロフェッショナルが企業の経営課題の解決を支援しているプライスウォーターハウスクーパース。M&Aのアドバイザリーとコンサルティングを提供する国内最大規模のコンサルティングファームを率いる椎名氏の「仕事論」とは?

(取材・文/上阪徹 撮影/工藤ケイイチ)

Chapter01大手コンピュータメーカーの研究所で仕事をしていた

 コンサルティング業界に入る前は、NECの中央研究所にいました。もともとコンピュータを勉強していまして、あまり疑問を感じずに選んだ仕事だったんですね。研究テーマは人工知能。今は第三次のAIブームと言われていますが、当時は第二次ブームの時代。ちょうど理論研究が落ち着いて、応用研究に視点が移ってきた頃で、自動翻訳機などに使われ始めていました。私がおもに行っていたのは、エキスパートシステムと呼ばれる、専門家が考えるプロセスやロジックをコンピュータに埋め込むことで、専門家と同じような役割をさせようという取り組みでした。
 例えば、生産計画。どんな順番でモノを作れば効率的で、生産能力を上げられるか。このアルゴリズムは社内の生産でも使われ、その応用システムは外販もされるようになりました。実際、生産効率は10%、20%と上げられるんです。ただ、私の中には次第に疑問が浮かんでいきました。これで本当に企業の役に立てるのか、と。なぜなら、そもそも販売計画に無理があったから。だから、在庫の山になったり、欠品したりする。
 やがて「これはそもそもの販売計画から見直したほうがいいのでは」と顧客企業に提案するようになりましたが、「それはコンサルタントの先生に入ってもらっているから」と。ここで初めて、コンサルタントという存在を知りました。

Chapter02巨大な会社にいたので、小さな新しい会社でやってみたかった

 企業にとって最も重要なことは、単に顧客にシステムを導入することではなく、最終的に効果が生み出せるかどうかだ、と私はだんだん思うようになりました。しかし、そこにもっとしっかり入っていくには、コンピュータ会社では難しい。企業に変化、改革を起こせないからです。これをやるには、経営戦略から入っていかないといけない。それができる仕事がコンサルタントでした。こっちのほうが面白そうだ、と感じて転職を決断しました。
 ところが、当時は研究所を辞める人間なんてまずいない時代。上も下も大騒ぎになりました。課長、部長、さらには役員からも慰留されましたが、私の決意は変わりませんでした。いくつかの選択肢がありましたが、私が選んだのがまだ立ち上がったばかりの小さな会社。それまで巨大な会社にいましたから、小さな新しい会社でやってみたいという思いがあったのかもしれませんね。
 ただ、入ってみると本当にびっくりするくらい会社に何の仕組みも整備されておらず、契約書の作成から何もかも、自分たちでゼロから作るしかなかった。でも、おかげで、いろいろな面で会社の仕組みを学ぶことができたんです。

Chapter03実際には、乗り越えられない山なんて、ない

 コンサルティング経験はありませんでしたし、先輩のコンサルタントも多くはない。本を読んだり、海外の事例などを調べたりして、企業の改革ってこうやってやるんだろうな、と自分なりに考えて作っていきました。ここでわかったのは、コンサルティングは正解のない世界だということです。どんなふうにやればいいのか、決まったものはないんです。
 そもそもお客さまの課題も千差万別。集まるスタッフのスキルもさまざま。ですから、案件によって毎回、答えは変わるわけです。こういうやり方だったらうまくいくんじゃないか、と自分で一生懸命に考えてやるしかない。
 たまたま幸運にも、私はお客さまと会話をするのが好きだった。お客さまとたくさん話をすると、本当に何に困っておられるのかがつかめた。お客さまも解答はお持ちでも、どうやって進めればいいのかがわからない。壁があるんです。だから、そこを私たちがやりましょう、と。真の課題を聞き出し、何がハードルが高いのかを確認し、どんなプロセスや体制で取り組むべきかを打ち出し、実行していけばいい。
 実際には、乗り越えられない山なんて、ないんです。大変なのは大変ですが、何とかなるんだということがわかりましたね。

Chapter04面白い仕事は飽きない。時間を忘れてしまう

 コンサルティングの仕事を始めて、自分の幅は大きく広がりました。研究所にて理論を組み上げる仕事から、お客さまの改革に携われる仕事へ。システムを作るにしても、改革をするためのシステムを作るわけです。しかも、お客さまの経営幹部にお会いする。若いうちから役員会に出席したりするわけです。こういった経験を積むと、視点が変わるんですね。
 普通ではとても会えないような人たちとコミュニケーションをするわけですから、もちろん勉強もしないといけません。彼らが求めているのは、私たちの専門能力です。いろいろ勉強しましたし、かなりハードに働きました。人間、誰でもそうだと思うんですが、面白い仕事は飽きないんです。どんどん時間を忘れてやる。気づいたら朝だった、なんてこともよくありました。会社に寝袋を置いていた時代もありましたから(笑)。
 入社してから会社は急成長していき、大きなプロジェクトも取れるようになりました。関連の会社も含めて300人規模のプロジェクトも率いるようになって。結果を出すためにチームをもり立てていく。たとえ自分の中に不安があっても、最善だと信じてみんなを引っ張っていく。そんなリーダーシップを肌で学んだのもこの頃です。

Chapter05想定外が起きることが想定内だというスタンスで考える

 プロジェクトが大きくなれば、トラブルも増えていきます。しかし、これがまた自分を成長させてくれるんです。そもそもトラブルは起きて当たり前。起きなければラッキーで、起きても落胆することはない。大事なことは、起きたときの想定をしておくことです。想定外も起きますが、そのときも慌てずに迅速に対応する。想定外が起きることが想定内だというスタンスで考える。あ、やっぱり来たな、びっくりしないぞ、と。そして、何より素早く動き出す。
 でも、トラブルが起きれば起きるほど、お客さまとの関係は深まっていくんです。仲良くなれるチャンスだと思ったほうがいい。必然的に議論する機会は増えますし、一緒に乗り越えれば信頼関係はより強固なものになる。プロジェクトで大事なことは、お客さまと一緒の船に乗って一心同体でやっていこう、という気持ちになれるかどうかですから。そうなれば、強い。
 もちろん、お客さまから怒られることもある。でも、大事なことは、次に進むこと。そのためにも、とことん怒ってもらったらいいと思います。その後には冷静なディスカッションができるからです。

Chapter06「Category of One」をメッセージに新しいカテゴリーのファームに

 ご存知のように、プライスウォーターハウスクーパースはM&Aのアドバイザリーやコンサルティングにより、お客様の経営課題の解決や成長を支援しています。今は「Category of One」というPwCグローバルネットワークのキーワードをメッセージに、他社にはない新しいカテゴリーのファームを作ろうとしています。
 最近では2014年4月、戦略系コンサルティングファームの旧ブーズ・アンド・カンパニー(現プライスウォーターハウスクーパース・ストラテジー)とグローバルでの統合を行い、さらに広範に「戦略から実行」のプロフェッショナルサービスを提供できるようになりました。そして今年2月には、M&A戦略コンサルティングに強い旧マーバルパートナーズ(現プライスウォーターハウスクーパース マーバルパートナーズ)の株式を取得。M&Aのアドバイザリー体制を一層強化しました。常に変化しながらチャレンジをし、経営戦略の策定からM&Aや事業再生・再編、海外進出支援、業務改革、ITによる実行までトータルにお客様を支援できる「グローバルな、真の戦略~実行ファーム」を目指しています。

Chapter07目の前の仕事を懸命にやっていたら、社長という仕事があった

 コンサルティング会社の資産は、人しかいません。他に財産はない。人材が唯一の資産なんですね。だから、人材育成にはこだわっています。これを考えるのも、リーダーの重要な役目だと思っています。
 そのためには、みんなとディスカッションしながら進めていくことも大切だと考えています。相手の立場に立って考えることは、コンサルタントの基本。何か違う意見を言うのも、何か理由があると考えます。その上で、議論をする。大きな目標はみんな一緒なんです。それは、お客さまをサポートして、お客さまの会社が成長することですから。
 振り返ってみても、入社以来、自分の将来のキャリアを考えるというより、とにかく目の前の仕事を懸命にやっていたら今のポジションになったという感じなんです。やはり一生懸命が大事。一生懸命になれる仕事を見つけることが大事。もっといえば、大変な仕事でもその中に楽しむポイントを見つけられるかどうか。そういう工夫が必要だと思っています。
 仕事を楽しむためには、仲間を作ることも大切です。一人で見る夢はただの夢。でもみんなで見たら、それは希望になる。仲間と一緒に成功を分かち合えると感動できるんです。プロジェクトは長ければ1年以上かかるものもありますが、ようやくシステムが動いた瞬間は、やっぱり泣けますよ。泣ける仕事って、そうそうないと思うんです。
 若い人にはどんどんチャレンジしてほしいですね。今しかできないことがあるから。そして新しいことをやるというのは楽しいものです。同じ仕事をするにしても、仕事の切り口、見方を変えるだけでも新しい発見になる。そうすると、また楽しめるんです。

椎名 茂 氏

マイナビエージェントが聞いた
社長の「座右の銘」

Always Changing , Always Improving!

全社員が集まるミーティングでキーワードにしている言葉です。変化し続けること、成長し続けること。お客さまは決して立ち止まっていません。新しいビジネスモデルをどんどん考えなければいけない。そういうところを支援する私たちが、自ら変化しなくてどうするんだ、ということです。常に変化を追い求めて、いろいろな新しいサービスを生み出していく。失敗はあるかもしれませんが、それも受け止めながら前に進む。そうやって、新しいことを生み出そうとする会社にしていきたいと思っています。

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